着実に成長し直線は独壇場
東京ダービーで二冠目指す
今年の3歳ダート三冠が幕を開けた。一冠目は大井1800メートルが舞台の羽田盃JpnI。JRA交流となって初回の昨年は8頭立てと少頭数だったが、出走奨励金・褒賞金等の周知や、G/JpnIグランドボーナスなどもあってか、今年は15頭が揃った。
JRAからは4頭が出走。デビューから3戦無敗で雲取賞JpnIIIを勝ったジャナドリアと2着のグランジョルノ、京浜盃JpnIIを圧勝したナチュラルライズと5着のアメージング。トライアルで優先出走権を獲得した面々が集まった。
地方からは、休み明けの雲取賞JpnIIIで3着に好走したスマイルマンボや、重賞初挑戦の京浜盃JpnIIで3着と力を見せたナイトオブファイア。クラウンカップの優勝馬ミーヴァトンなど実力馬たちが参戦した。
ナチュラルライズが単勝1.3倍の1番人気。ジャナドリアが3.9倍と続き、3番人気以下は10倍以上とトライアル勝ち馬2頭の一騎打ちムードとなっていた。
注目の先行争いは、抜群のスタートを切ったスマイルマンボがすんなり先手を取った。ジャナドリアが直後でぴったりマークし、3番手にナチュラルライズ、逃げ候補だったアメージングが4番手に続いた。少し離れた後ろにナイトオブファイアやグランジョルノが追走し縦長の展開。
3~4コーナーでナチュラルライズが外から前2頭を射程圏に入れると、アメージングとナイトオブファイアも差を詰め、勝負は5頭に絞られたように見えた。しかし、そこからはナチュラルライズの独壇場。直線に入るとあっという間に前を捉え内ラチ沿いに進路を取ると、一気に突き放し5馬身差で優勝。その圧倒的なパフォーマンスにスタンドからは大歓声が沸き起こった。
2着は3~4コーナーで手応え良くインを回り、直線は外から脚を伸ばしたナイトオブファイア。ゴール前でスマイルマンボを交わしたジャナドリアが6馬身差の3着に入った。
溢れんばかりのパワーで一冠目を手にしたナチュラルライズ。京浜盃JpnIIと同様、レース前半は頭を上げながら折り合いを欠き、直線でも内にもたれるシーンが見られ、横山武史騎手が「(勝てて)うれしいですけど、すごく疲れました」と口にしたほどだった。
伊藤圭三調教師によると「普段の調教から走りたいという気持ちが強く、なだめながら調整している」とのこと。また、右にもたれる癖を修正するために、前走で外したチークピースを今回も右側だけにつけて臨むなど、試行錯誤をしながら馬と向き合っているようだ。それでいてこの強さなのだから、将来性が計り知れない。レース後、ライバル陣営は「勝ち馬が強すぎた」と口を揃えていた。次走はもちろん東京ダービーJpnI。「今日もゴール板を過ぎてからもまだ走りたがっていましたから、距離が延びても楽しみです」と伊藤調教師は二冠目を見据えた。
前走からさらに進化を見せたのが2着のナイトオブファイア。中間は厩舎の偉大な先輩セイカメテオポリスや、ミックファイアの胸を借りて調教を積んできた。「かなり負荷をかけても今日(の体重が)プラス6キロですから、色んなものを吸収しているのを実感しています。4コーナーの手応えが良くて勝つんじゃないかと思いました。勝ち馬は抜けていますが、少しずつ背中が見えてきたと思います」と矢野貴之騎手は確実に成長を感じているようだった。渡邉和雄調教師は「前走を使った経験がとても活きていました。レースセンスがすごくいい馬です。2000メートルに距離が延びるのは確実にプラスですし、ダービーで逆転したいですね」と前を向いた。
人気の1頭だったジャナドリアは2着馬からも大きく離されてしまった。「状態は完璧で、返し馬も良かったです。2番手の良いポジションで冷静に走ってくれましたが、直線に向いてからあまり加速してくれませんでした。ダービーで頑張ります」とクリストフ・ルメール騎手。
今回も逃げたスマイルマンボは最後まで粘ったが4着だった。「内のアメージングの出方しだいだと思っていたけど、スタートが良かったのですんなりハナに行けました。プレッシャーをかけられ大変な競馬だったので直線でバタバタになるかと思いましたがよく頑張ってくれました。1600メートルくらいがベストかもしれません」と初コンビの吉原寛人騎手はコメント。坂井英光調教師によると、距離も考慮しながら、次走は東京ダービーJpnIも含めてオーナーと相談するとのことで、次の大一番に向けて各陣営の動向が注目される。
なお、祝日開催で晴天に恵まれた今年は、昨年よりも7500人以上多い13599人が来場。売得金額も昨年の1.5倍以上を記録し、大盛況の羽田盃デーとなった。
取材・文秋田奈津子
写真いちかんぽ(岡田友貴、早川範雄)
Comment
伊藤圭三調教師
(厩舎のジーワン初制覇について)あまり気張らず平常心で臨めたのが良かったと思います。この馬は前進気勢旺盛なので折り合いに苦労していましたし、直線は内ラチを頼って正しい走りではありませんでしたが、それでも後ろを離してくれました。落ち着いて走れるトレーニングをして次に向かいたいです。
横山武史騎手
スタートは速い方ではないのでスピードが速い馬を行かせつつなんとか壁を作りました。折り合いは難しかったですが馬も良く我慢してくれました。直線で抜け出してからもたれる仕草もありましたが強い競馬をしてくれましたね。粗削りな面もありますが、着実に一歩一歩成長していると思います。