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ヤングジョッキーズシリーズFR 中京

 

園田1位を守って優勝は鷹見騎手
  地方騎手が3度目の表彰台独占

憧れのJRAで騎乗できるとあって、地方騎手たちは並々ならぬ思いを抱いて、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)はファイナルラウンド(FR)2日目を迎える。

今年の舞台はJRA中京競馬場。地方所属8名のうち2022年のFRに出場した及川烈騎手(浦和)以外の7名は初騎乗だ。園田ラウンドを8着、1着で終えて暫定2位の土方颯太騎手(兵庫)は岐阜県出身で、同競馬場は少年時代に何度も通った。紹介式では「フワフワした気持ちだった」というのも想像がつく。また、望月洵輝騎手(愛知)、長江慶悟騎手(笠松)、さらに両親が笠松の調教師と厩務員という田口貫太騎手(JRA)にとってもほぼ地元。第1戦のパドックでは特にこの3人に大きな声援が飛び、長江騎手はのちに「たくさん名前を呼んでもらって恥ずかしかった」とはにかみつつも、嬉しそうだった。

 

しかし、第1戦はYJSらしからぬレース展開となった。先手を主張する馬がおらず、持ったままでハナに立ったのは田口騎手。グッとペースを落とし、1勝クラスの芝2000メートルで前半1000メートル62秒0のスローペースとなった。そうなると前有利なのは必然。直線で2番手から脚を伸ばした1番人気タガノデュードと室陽一朗騎手(浦和)が半馬身抜けて勝利を手にした。2着も3番手で運んだ望月騎手で、3着に7番人気ながら田口騎手が上手く粘り込み、4着も先行した古川奈穂騎手(JRA)で、5着にようやく中団から差した加藤翔馬騎手(金沢)が入った。

ゴール直後、検量室周りでは何やら盛り上がっている声が聞こえてきた。ファンがガラス越しに引き上げの様子を見られるホースプレビューに、笠松や名古屋のジョッキーたちが集まって地方騎手の勝利に沸いていたのだった。

室騎手はJRA初騎乗初勝利。「芝というのもあって夢のような時間でした」と笑顔が弾けた。

一方で唇を噛んだのは2着望月騎手。中京芝コースの直線は412.5メートルと、普段騎乗する名古屋競馬場より100メートル以上長いのだが、「意識してどっしりと構えすぎました」とあと一歩及ばなかった。

 

残すは最終戦の中京第2戦のみ。装鞍を終えて各々が検量室に戻ってくると古川騎手や長浜鴻緒騎手(JRA)は「ポイント、どうなっていますか?」と報道陣に逆取材。逆転優勝の可能性を探ったのだが、高い壁として立ちはだかるのが暫定1位の鷹見陸騎手(大井)。初日園田で獲得した50ポイントは大きく、第1戦でも7着6ポイントを加算。暫定2位で48ポイントの室騎手以外は勝たなければ逆転優勝がない状態だった。

そういった思いが詰まっていたのだろうか。中京第2戦は若手騎手らしいハイペースとなった。その一因は加藤騎手と室騎手のハナ争いが激しくなったこと。前半600メートルは34秒2で、中団以降の騎手はみな色気を持ったはずだ。その中から直線半ばで先頭に躍り出たのは土田真翔騎手(JRA)。福島県から応援に駆け付けた家族や地元新聞社の記者から声援が飛んだが、そこに鋭く差し脚を伸ばしたのは望月騎手。坂を上がって交わすと、外から伸びる佐藤翔馬騎手(JRA)をクビ差しのいでブービー人気のアイファースキャンでJRA初勝利を手にした。3着と4着も後方から伸びた河原田菜々騎手(JRA)と田口騎手で、土田騎手は5着だった。

 

総合1位は57ポイントで鷹見騎手。園田ラウンドから首位を守り続けた。約1年、騎乗していない期間があり、今年戦線復帰。「こんなに乗せてもらえると思っていませんでした」というところから今年は大井リーディング8位に入っている。調教師と関係性を築き、自身のキャラを確立することを意識しており、YJSでも取材の受け答えに社交性の高さを見せた。

総合2位は4ポイント差で望月騎手。中京第1戦で勝てていれば優勝の可能性が高かっただけに「2位の悔しさをバネに頑張りたい」と話した。とはいえ、今年4月デビューですでに地方85勝。名古屋は調教をつけた騎手がレースでも騎乗することが非常に多く、デビュー時から営業して調教頭数を増やしたことが成績に繋がった。

総合3位は49ポイントで室騎手。今年は約4カ月、名古屋で期間限定騎乗を行い、常時交流の笠松と合わせて43勝を挙げる活躍だった。11月18日に通算101勝を達成して減量を卒業しているため、これが最後のYJS。表彰式では「これからも室陽一朗をよろしくお願いします!」と高らかに発した。

表彰台の地方独占は2017年のYJS創設以降、19年、20年に続く3回目。多くの笑顔と悔しさに包まれながら、YJS2024は幕を閉じた。

 


取材・文大恵陽子

写真いちかんぽ(桂伸也、岡田友貴)

Comment

総合優勝 鷹見陸騎手(大井)

優勝はとても嬉しいですけど、今日は成績が良くなくて悔しかったです。園田第3戦2着は一発やってやろうと意気込んでいました。20年優勝の吉井章騎手からも「おめでとう」と連絡をいただきました。怪我せず安全なレースを意識して、次は重賞レースを勝ちたいです。

総合2位 望月洵輝騎手(愛知)

2日間、悔しいレースも嬉しい勝利もありました。中京第1戦は左回りで手前を替える時に上手く体を使えませんでしたが、2戦目は意識して乗りました。親戚総出で応援に来てくれていました。いまは馬上で動きすぎないよう騎乗フォームを改善しています。他場から呼ばれる騎手になりたいです。

総合3位 室陽一朗騎手(浦和)

中京第1戦は向正面で掛かってしまいましたが、馬に助けられて3位になれたので嬉しく思います。初めての芝で、いつも見ていた景色で乗れてすごく楽しかったです。期間限定騎乗の名古屋で経験した知識や技術を浦和でも生かせるように乗っています。いっぱい勝てる騎手になりたいです。