距離克服し牝馬が8年ぶり勝利
ソルジャーフィルドは3着に健闘
地方競馬の重賞において、最も長い歴史を持つ一戦。ケンタッキーダービー出走馬選定ポイントシリーズに加えられ、前2年の勝ち馬デルマソトガケ、フォーエバーヤングが海外でも結果を出したことで、世界への登竜門として、より認知されるようになった。
今年の注目はJRAのナチュラルライズ。新馬戦での白星に続き、同シリーズのカトレアステークスも制し、世界へ続く階段を着実に登りつつある。単勝1.4倍の1番人気に推され、無傷3連勝での頂点奪取に期待が集まった。これに5.6倍のオッズで続いたのが牝馬のミリアッドラヴ。新馬戦、エーデルワイス賞JpnIIIを連勝し、同じく無敗のまま駒を進めてきた。これらに兵庫ジュニアグランプリJpnIIを勝ったハッピーマン、JBC2歳優駿JpnIIIが鮮やかな勝ちっぷりだったホッカイドウ競馬のソルジャーフィルドがどう対峙するか。器用さとタフさが問われる川崎マイルを舞台に、熱戦の火ぶたが切られた。
先手を奪ったのは、南関東からただ1頭の参戦となったホーリーグレイル(川崎)。大外枠から迷いのない逃げを打ち、縦長の展開を演出する。少し離れた2番手でミリアッドラヴが追走し、JRAのコパノヴィンセント、ハッピーマンもこの一角。さらにその後ろにナチュラルライズとソルジャーフィルドが続く形となった。
しかし、ホーリーグレイルの逃げも3コーナーまで。ミリアッドラヴが早めに先頭に立つと、2馬身ほどの差で直線に向いた。初めてのマイル戦に不安を残していたが、その脚いろは確かで、後続はなかなか差を詰められず。ゴール寸前でハッピーマンが詰め寄ってきたが、それも3/4馬身差まで。無傷3連勝で世界への切符を手繰り寄せた。
エーデルワイス賞JpnIIIからの距離延長で戴冠。このローテーションでの勝利は2016年のリエノテソーロ(JRA)以来で、牝馬の勝利も同馬以来となる。手綱を取った西村淳也騎手は「具合が良かったことで思ったよりも反応が良かったですが、押し切れてよかったです」と状態の良さを勝因に挙げ、「昨年のフォーエバーヤングのようになってくれれば」と期待を寄せた。
管理する新谷功一調教師も「仕掛けが早いなと思ったので、最後はどきどきしながら応援していました」と胸をなでおろした様子。今後はサウジダービーGIII(25年2月22日、ダート1600メートル)が目標。持ち前のスピードを武器に、前2年の覇者と同様に世界へ飛び立つ。
2着はハッピーマン。前走の兵庫ジュニアグランプリJpnIIと同じくスムーズなコーナーリングで位置取りを上げ、直線でも脚を伸ばした。坂井瑠星騎手は「理想的なレース運びができましたね。勝てなかったこと以外は、いいレースだったと思います」と内容を評価。器用に立ち回れるのは魅力で、今後も小回りコースを舞台にした活躍が期待できる。
地方の期待を背負ったソルジャーフィルドは初の長距離輸送と左回りだったが、中団からじわじわと伸び、2着から1馬身半差の3着に食い込んだ。小野楓馬騎手は「3コーナーで前が詰まって、少しブレーキがかかりました。スムーズだったら、着差も違ったのではないかと思います。でも、今回は反応が良かったですし、自然と前めの位置につけることもできました」と馬の成長を感じ取った様子。もう少し長めの距離が合っているとのことで、中距離路線の主役に成長することを期待したい。
1番人気のナチュラルライズは、さらにハナ差の4着に敗れた。横山武史騎手は「ハミ受けが今ひとつだったし、現状では左回りも合わない感じです。陣営も対策してくださっているのですが……。能力はあるので、もどかしいところ」と肩を落としたが、終始外めを回らされながら追い上げた内容は悪くなかった。条件次第で走りも変わってくるに違いない。
取材・文大貫師男
写真築田純(いちかんぽ)
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新谷功一調教師
距離は自分も半信半疑でしたし、4回コーナーを回るというのも初めてでしたから、そういうところでどれだけ体力を消耗するのかな、と思っていました。仕掛けが早いかなと思ったので、ゴールまでどきどきしながら応援していました。今後は距離適性とコース形態から、サウジダービーを考えています。
西村淳也騎手
距離は半信半疑でしたが、それを覆すかのような強い勝ち方をしてくれました。前半はリラックスさせることをメインに考えていましたが、具合が良かったことで思ったよりも反応が良く、早めに先頭に立つ形になりました。押し切れて良かったです。すごく強いですし、乗っていて楽しい馬です。